お店&施設情報
府中に息づくお店探訪「いせや」in くるる
『ミートショップ いせや』閉店のお知らせ。(くるるホームページへ遷移します。)
世間話から要望を引き出し、納得のいく一品を出す
府中駅南口からほど近い、くるる一階に店舗を構える「いせや」では、お客さんとの世間話を大切にしながらも、こだわりをもって納得のいく商品を扱うことをモットーに、精肉の他コロッケやメンチカツなどの総菜も提供しています。
家族で代々続く「いせや」現社長の竹田嘉伸さんが感じる府中の変化、そして気になる量り売りのお肉の上手な注文の仕方をお聞きしました。
豪快な職人と共に過ごし気づいた納得のいく一品
子どもの頃から店でじゃがいもの皮むきの裏方の手伝いをしていました。学校卒業後はサラリーマンをしていましたが最後までサラリーマンをする気は無く、いつかは店を継ごうと思っていました。サラリーマンをして外の世界を知るうちに、店の職人の豪快さを改めて実感することになりました。例えば、サラリーマンは飲食店に食べに行って会計が一万円で五人いたら一人二千円と細かく計算しますが職人は違います。面倒だからと一人で一万円だして後は残りの人で分けて、と豪快にふるまうのです。毎回違う人が豪快に会計することにより回っています。職人の方は普段の生活でもカップラーメンのソースの袋を出さずにお湯を注いだりもしていました。サラリーマンでは考えられませんね。また、子どもの頃から「いせや」で手伝いをする中で、自分で納得したものを売る、できるだけお客さんの要望で店頭に出してないものでも作ることを大事にしてきました。ですので、良くないものと思った肉は買わないこともありました。
いせやにいて感じる府中の変化
以前感じていた府中市民の雰囲気は、賭け事に寛容で、おもしろい人が多いといった印象でした。豪快にお金を服から出すお客さんも以前は居ましたし、競馬関係者も府中に住んでいたため、実は肉屋で馬刺しを出すことはできなかったんです。お馬さん信仰があり、府中で馬刺しを出した店があると競馬関係者に怒鳴り込まれた店もあったほどでした。時代は変わり、今のお客さんは50代から80代の方がメインですが、新婚の方など若い方も買いに来ます。特に土日は若いお客さんが多いですね。そのような変化の中で、前までは考えられなかった馬刺しを置いたり、中国の方向けに骨付き肉を置いたりと商品展開も変わってきています。今はコロナウイルスの影響で帰ってしまいましたがイスラム教のハラル認証のある肉を出して欲しいとと言われた時は、鶏肉2kgを袋から開けずに渡して対応することもありました。
そんな変化の時代の中にあって、お店として変わらないものもあります。それは、コロッケ、メンチカツなどの総菜の安さです。創業当初は5円、昭和52年の500円玉ができたころには50円でした。創業当初から、主婦の味方として安い値段で総菜を売り続けています。
世間話から引き出す濃厚なつながり
店でお客さんと接する時には、世間話を大切にしています。店に来られた主婦の方が何を求めているかを話の中で見極めておすすめするためです。味付けを重要視するか、素材を重要視するかでどのお肉を料理に使うかが変わってきます。そこを世間話の中で聞いて、その時に合ったお肉をおすすめします。料理の簡単な保存方法や時短レシピも教えていますよ。世間話では「くらやみまつりに出たい」など様々な要望を聞くことがあり府中のそれぞれの時季の会話を大切にしています。
量り売りのお肉の上手な注文の仕方
いせやの肉はA5ランク、さらに霜降り等級であるBMS11以上(12が最大)のお肉以外は扱っていません。肉の銘柄を指定しないで仕入れているので安く仕入れることができています。松阪牛がいつものお肉の値段で売っているのを知っているのはお店の常連さんぐらいですね。スーパーで売っているお肉が安いのはA,B,Cの一番下のランクの肉をまとめて仕入れているからで、一番下のランクの肉は脂身が強かったりもします。実は、「見た目の良い肉」と「美味しい肉」は違います。スーパーの牛肉は去勢したオスの肉で、見た目はいいです。しかし、いせやのような量り売りの肉屋で売っている肉はメスの肉で見た目は悪いのですが、美味しい肉なんです。
若い人には馴染みのない肉の量り売り。どう頼んだらよいのだろうと緊張することもあるかもしれませんが、一番良い買い方は予算と食べる人数を伝えることです。例えば一万円で四~五人で和牛のすき焼きをしたいと言われると店側としてもサービスをしやすいですね。量り売りの良いところは、お肉そのものが店頭には出ていなくてもお客さんからの要望があったら商品を用意できるところです。例えば先日、見ごたえあるからという理由で500gくらいの分厚いステーキを買って行かれた方もいました。いせやにくる新婚のお客様で、一人で何グラム食べればよいか分からず、独身の頃はスーパーの肉を余らせていたと仰っていた方には、世間話をしながら適切な量と簡単な料理方法、保存方法をお伝えしています。
「いせや」のこだわりに触れて
今回は「いせや」現社長の竹田嘉伸さんに、店に立つときに大切にしていることや商品のこだわりをお聞きしました。豪快な職人とサラリーマンの性格の違いや、府中の街に変化がありつつも変わらないコロッケやメンチカツなどのお惣菜。また、量り売りのお肉の上手な買い方を教えて頂いたことで、スーパーと精肉店それぞれのお肉をみる目が変わったような気がしています。今までは量り売りのお肉を買うことに躊躇していましたが、次に前を通る際には、まずは世間話をしに立ち寄ってみたいと思います。
(文:岡田雅 東京農工大学学生)
(写真:本間美実子 東京農工大学学生)
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