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【まちゼミ特集】府中に息づくお店探訪「ロシアレストランペーチカ」

【まちゼミ特集】府中に息づくお店探訪「ロシアレストランペーチカ」

※緊急事態宣言及びGOTO商店街事業一時停止延長に伴う国からの要請に従い、店舗内等で行うまちゼミについては中止となりました。
 Zoomを使ったオンラインまちゼミは予定通り実施いたします。
ペーチカさんの講座は、中止となりました
【オンラインでの開講講座一覧はこちら】

このコラムは「第3回むさし府中まちゼミ」の講師となる方への取材を通して、府中に息づくお店を紹介します。
取材を行ったのは、府中に関わる学生を中心とした若者達。若者の視点で府中のまちなかが見えてきます。
※この記事は2020年12月の取材に基づき作成されました。


 

府中駅東口から徒歩4分ほど、Y字路に建つマンションの2階に、ロシアレストランペーチカは佇んでいます。店内に入ると、特徴的な白木の家具の温かな空間が私を出迎えてくれました。通常レストランに入るときには少し緊張してしまうのですが、ペーチカさんには、逆に体の緊張がほっとほぐれるような、そんな温かさがあります。

店内には、絵や雑貨があふれており、入ってすぐの場所にはピアノもおいてありました。まるで家のような温かな空間にはどんな秘密があるのか、オーナーにお話を伺ってきました。

 

「暖炉のような温かさを」

 

ペーチカとはロシア語で「暖炉」という意味です。暖炉といってもロシアの暖炉は独特で、暖炉の上で寝たりもします。パンを焼くようなかまどがあって、その上の少し暖かい場所に布団をしいて寝ることもできます。寒いロシアでは、暖炉は身近で、様々な温かさの象徴です。そのような「様々な温かさ」を提供できるお店にしたいという思いを込めて店名をつけました。

レストランを開業したきっかけは、私自身が延べ22年、5回にわたるロシア駐在で経験したロシアの人たちとの深いつきあいから、食を通したロシアへの正しい理解を広めたいという強い思いでした。

食は、人の心を開き、あらゆる物事に対して人をオープンにしてくれるものです。お客様に食で心を開いていただき、ロシアそのものについての理解を深めていただく場になればと願っています。ロシアは遠い異国の地ではなく、私たちと気心の通じる人たちが沢山いる隣国だ、そういう風にみなさまに感じていただける場所にできれば幸いです。

 

芸術の交流の場として

ここにおいてある雑貨は私(オーナー)の私物です。ロシア人の友達から送別の品としてもらったものや、自分で買って集めたものです。ロシアの伝統工芸品や美しい絵など、食事と一緒に楽しんでいただきたいと思います。

 

また、食だけではなく、様々な芸術の交流の場にしてほしい。そんな想いで、絵も飾っています。いまは、縁のあるイラストレーターの絵本の原画を展示しています。ロシア料理を食べに来た人がイラストを見てくれたり、イラストレーターのファンの方がロシア料理を知ってくれたり…という相乗効果があるといいなと思っています。作家さんの雑貨も販売しているので、ペーチカでこのイラストレーターさんのファンになった方が購入してくださると素敵だなと。この取り組みは初めてなので、ある程度の期間展示させていただいたら、他の方の絵も展示させていただきたいですね。

 

またペーチカは、音楽の憩いの場としての役割も持っています。ピアニストの方がライブをしてくださることが決まっていますし、私自身、月に1回、金曜日の夕刻にギターの師匠と共にミニコンサートを開催しています。

音楽もまた、ロシアを知る上で重要なものです。日本でも有名な「100万本のバラ」や「つる」を歌うと、そのロシア音楽特有の哀愁を直に伝えることができます。それも、「正しくロシアを理解する」「ロシアを身近に感じること」の一歩だと考えています。

ロシアを身近に感じるこだわり

ロシアの木材の輸入の経験から、ロシアの木の温かみを皆様に味わっていただきたいと考え、イルクーツクから輸入している赤松を新潟から特別に送ってもらい、店のインテリアとして使いました。赤松は白い色と独特の香りで、日本でも人気のある木材です。日本でこんなに赤松を店舗に使っているところはないと思いますよ。ペーチカの「温かさ」の秘密の1つですね。

「ホンモノ」にこだわっている、というのもペーチカの特徴です。

日本ではピロシキは揚げパンだと思われていたり、ボルシチはトマトスープみたいなものだという認識があったりするようですが、本場の味はどういったものなのかを常に提示できるレストランでありたいと考えています。ペーチカのボルシチやピロシキは自分がロシアで味わってきた味だけでなく、ロシア人の意見も聞き、書籍でも確認しながら常に「ホンモノ」のおいしさをアップデートしています。ボルシチの上にのせるスメタナ(サワークリーム)も店で作り、本場の味に近づけています。

ロシア人のお客様に率直に感想を求めることもあります。「このボルシチはどうですか?ロシアっぽいですか?」と。そうすると「お世辞ではなく、ロシアで食べたものよりおいしい」と言ってくださることもあり、その瞬間はとても幸せな気持ちになれます。

お客様に向けたメッセージ

ペーチカはロシア料理のレストランですが、音楽を聴く憩いの場、絵画を楽しむ場、朗読会…など、お客様にいろいろな形で使っていただきたいと考えています。「こういう形で使いたい!」「ライブがしたい!」「ロシア料理を食べながら人と交流を深めたい!」など、ご要望があれば、できる限りお応えしたいと思っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

ロシアと日本をつなぐまちゼミ

ペーチカが提供するまちゼミは、日ロ関係の歴史について、ロシアンティーを味わいながら学んでいただくというメニューになっています。ロシアは日本の隣国なのですが、日本人にとってロシアは、韓国や台湾といった国よりも距離があるように感じられます。現地で長年にわたり暮らしてきた私から見ると、極東のロシア人達は特に、隣国の中で日本を最も好ましく、憧れさえ持ってくれています。この点は、現地で彼らと交流してみないとなかなか理解できないことです。私は、このロシア人の思いを皆様に伝えることが自分の役目であると考えています。ここペーチカで、ロシアに対する正しい理解を深めていただきたいと思っています。

 

去年もおかげさまでたくさんの方に来店していただきました。このご時世でなければ今年ももっとおよびしたいのですが、それができないのが悔しいです。

でも、こんな時だからこそ、おいしい料理は人の心を豊かにしてくれると、私たちは信じています。

【インタビュー・文】尾崎成美(東京外国語大学4年)
【写真】西田衣里(東京外国語大学院1年)

 


【店舗情報】

ロシアレストランペーチカ

住所:府中市府中町2-6-1 プラウドセントラル2F
TEL:042-368-8830
定休日:土日祝日