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【まちバル特集】府中に息づくお店探訪「ロシアレストランペーチカ」

【まちバル特集】府中に息づくお店探訪「ロシアレストランペーチカ」
このコラムでは、2022年に開催を予定している「第2回むさし府中まちバル」の実施店舗への取材を通して、府中に息づくお店を紹介します。
今回は、府中市内にある東京外国語大学との連携企画として、東京外国語大学の学生取材班の皆さんに取材をしていただきました。
※この記事は2021年9月の取材に基づき作成されました。

府中駅東口より徒歩3分。珍しいキリル文字の看板に導かれて辿り着いたのは、異国の雰囲気漂う、しかしどこか懐かしい空間。レストランの名前である「ペーチカ」(ロシア語で「暖炉」の意味)のように「あたたかい」お食事、空間、そしてお店に込められた想いが、訪れる人々を包み込みます。今回は、その「あたたかさ」の秘密を、オーナーの前田奉司さんと中村真純さんに伺いました。

 

店のイメージ

日本にあるロシアレストランの多くは高級レストランのような内装で、少し敷居が高いように思われるかもしれません。それに対してこちらのお店は、照明と木の温もりが印象的です。前田さんが以前訪れた、ロシアの森の中にあるログハウスのようなレストランをイメージして作られたそうで、店内の木材はイルクーツクから輸入した赤松が使われています。ゆったりとしたBGMも相まって、普段の生活から少し離れてホッと一息つけるような空間が広がります。料理を待つ間も、絵画や、ロシアに関する本、雑貨などが目をひき、会話が弾むこと間違いなしです。

なぜ店を作ったか

5回にわたりのべ22年間ロシアに駐在し、50年以上ロシアの人たちと交流してきた前田さん。ロシア現地、特に極東ロシアの人々があたたかく受け入れてくれたことに感激するとともに、一般に日本人のロシアに対する認識が薄く、ネガティブな印象が抜けきれていないことに残念な思いがしたといいます。そのようなご自身の経験をきっかけに、日本とロシアが互いを正しく理解するための交流の場としてこちらのレストランを創業し、2年半がたちました。ロシア料理の枠を超えた文化交流の場としても、絵画の展示やライブペイント、リサイタルなど、数々のイベントを開催してきました。

 

「ロシア人がお客様をもてなす時は、食事をいっぱい、食べ切れないくらい出すんです。」そう語る前田さんご自身も兼ねてから食に関心があり、駐在中に一人で天ぷら等を作って仲間にふるまったり、 勤めていた事務所の食堂をリードしたりといった経験があるそうです。中村さんも、大学では食と人とのつながりについて学ばれていたそうで、「食べることは、コミュニケーションの基盤にあると思う。」と語ります。

メニューのこだわり

開店から約1年は、日本での経験が長いロシア人のシェフに手ほどきを受けていました。

「日本にあるものでロシア料理を作る」という彼らのスタイルのおかげで、材料に困ることがなく、今もしっかり受け継がれています。当店こだわりのロシアンティーもその一例です。ロシアでは「ジャムを食べながら紅茶を飲む」という飲み方がありますが、砂糖たっぷりのロシアのジャムに比べて、日本のジャムは甘さが控えめで、果実も違います。そのため、ペーチカでは、絶妙なバランスで作られた特製ソースを紅茶に混ぜた状態でいただきます。「好みで量を調節してもらうと、全部入れる人はいないんですよ。」絶妙なバランスで作られた特製ロシアンティーは、安定の美味しさ。豊かな香り、優しくさっぱりした甘さ、体も心も元気になるような温かさ、そして鮮やかなピンク色。五感を駆使して味わうべきとっておきの一品です。

その他のメニューについても、ロシアのお客さんから「これはロシアより美味しい」「お母さんの味がする」との言葉をもらうこともあるそうですが、ロシアの味を伝えるという点以外にも、工夫が施されています。例えば、ロシアでも黒パンは、店によって様々で、必ずしもおいしいものばかりではないそうです。黒パンはロシア料理には欠かせないもので、その味で店が評価されると言っても過言ではありません。だからこそ、多くの人に受け入れられるものにしたいと、ペーチカでは材料の配合や焼き方について研究に研究を重ね、日本人にも美味しいと思ってもらえる黒パンを実現したとのことです。

 

料理は日本の食材で再現していますが、日本ではなかなか手に入りにくいものでぜひ店で紹介したいもの、例えばロシアの塩イクラやニシンなどは、今後、現地からの調達も考えているそうです。

体にも良い

さらに、これからの季節にぴったりのメニューを紹介していただきました。まずは、

ビーツを使った真っ赤なスープ、ボルシチ。日本ではケチャップなどをたくさん使う場合もあるそうですが、ペーチカのボルシチの赤さはビーツの赤さ。見た目から、もっと濃厚な味がすると思ったら、びっくりするほど、あっさりしていて優しい味です。「ボルシチを食べていると風邪をひかないんですよ。」そう話す中村さんは、ボルシチのおかげか、開店以来風邪をひいていないと言います。

 

また、こちらのお店ではチキンストロガノフも楽しめます。ぜいたくなビーフストロガノフとはまた違って、鶏ささみで作るのでとてもあっさりしていて、そこにコクのあるソースが満足感を与えてくれます。ストロガノフに添えられるグレーチカ(そばの実)も、体に良く、ロシアではよく食べられているものです。

これからの展望

ロシアレストランペーチカは、東京外国語大学「外語祭」のロシア料理店に協力したり、他の場所でも気軽にロシア料理が楽しめるようにと一部メニューを委託販売していたりと、お店を飛び出して活動の幅を広げています。

 

「(コロナの状況も鑑みて)音楽も徐々に再開しようとしています。」まずは前田さんとギターの先生とで、ペーチカナイトという「ロシア民謡の夕べ」を、そして、ロシアに縁のあるオペラ歌手によるリサイタルも計画しているそうです。10人くらいでゆったりと、至近距離で音楽を聴ける機会はそう多くありません。これも当店の特別な「あたたかさ」といえるかもしれません。中村さんも、「ロシアに限らず、いろいろな音楽やアートを入り口にしてもらって、交流のスペースになればと思っています。」と話します。「アートに興味がある人がアートを見に来たところでロシア料理を知ってもらう、音楽を聴きたい人も同様です。いろいろな入り口からまずはロシア料理を知ってもらって、そこからロシアに興味持ってもらうという場所になればいいなと思うんですよね。」

また新しい試みとして、料理を食べながら、料理の歴史やロシアの生活を紹介したいと前田さんは言います。長年ロシアで生活されていた前田さんだからこそ知っている、教科書に載っていないような、生活に密着したお話を聞きたいと、期待に胸が高鳴ります。

「例えば、ロシアの冬は寒いので窓が二重になっていて、ペリメニ(ロシア風水餃子)を、窓の間や窓の外で冷凍保存ができるのです。それを食べるときにスープに入れて、というようなことをするんですよ。」

 

「ロシア料理と言ったら、熱いスープに常温かよく冷えたウォッカをきゅっと飲むのが良い。お酒の好きな人には、飲み方も教えてあげたいですね。日本のようにウォッカに何かを混ぜたりはほとんどしないんです。また、ロシア人は、空きっ腹に飲むということはしません。必ずしっかり食べてから飲みますよ。実はワインも有名なので、美味しい料理に美味しいお酒という、食べ合わせを楽しんでもらいたいです。」

海外旅行が恋しくてたまらないあなたも、秋風の不意打ちに戸惑っているあなたも、

ロシアレストランペーチカで心と体を温めてみませんか?

 

【インタビュー・文】柳原 実和(東京外国語大学言語文化学部4年)

【写真】関谷 昴


【店舗情報】

ロシアレストランペーチカ

住所:〒183-0055 東京都府中市府中町2丁目6−1 プラウド府中セントラル 2F
電話番号:042-368-8830
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