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府中に息づくお店探訪「吉垣生花店」

府中と一緒に、花のちからを借りて成長する生花店

府中駅南口から徒歩5分、けやき並木通りから小道に入った先に、突如ひと際目の引く蔦で覆われたお店が現れます。近づいてみると、色とりどりの花やサボテン、そして気さくな店主が待っています。今回取材に伺ったのは、「花はよしがき」さん。
創業から70年以上、府中で営んできた歴史や、花を贈ることの意味について吉垣生花店三代目店主の吉垣親伸さんにお話を伺ってきました。

府中を見守るお花屋さん

「花はよしがき」は1946年創業以来、まちの花屋として府中を見守ってきました。創業当時はけやき並木沿いのお蕎麦屋さんの一角で営んでいたんですが、現在は場所を移し、お客さんの多様なニーズに応えられるように色とりどりの花を取り揃えています。
花と府中に熱い思いで向き合っている日々から、お客様に最適な提案をできることが私たちの誇りです。

気持ちを花に託して

長い歴史の中で、お客さんの目的はお店の開店祝いからお墓参りへ行くおばあちゃんまで様々です。お客さんの目的の変化がありながらも、長年にわたり多くの方にありがたいことに来ていただいてます。戦後、府中には関東村という米軍住居が近くにあったこともあり、外国のお客さんが多かったんです。外国のお客さんから家庭用、贈り物といった戦前にはなかった、花を自身へ、大切な人へ贈る文化が一足早く流行り始めました。
花を自身へ、大切な人へ贈る文化の先駆けといえども、府中の人、そして日本の人が花を贈ることはまだまだ海外に比べたら少ないと思うので、贈り物の候補にいれてほしいなと思っています。 もともと、贈り物は、贈る人の気持ちを届けるものだと思うのですが、中でも花は100%気持ちそのものを届けられる。「お誕生日おめでとう」「具合大丈夫?」「いつもありがとう」「元気出してね」。いろんな気持ちが乗っているところが、お花の魅力のすごく大事な部分だと思うんです。

以前、大学の授業でとある実験をしたことがありました。教室の前に男女二人に出てきてもらい、男性に告白をしてくださいとお芝居を頼んだんです(笑)。もちろん、お芝居としてね。当然、いきなりそんなことはできなかった。ところが、同じことを今度は花と共に頼んだら、花に気持ちを託すことで男性は告白することができたんです。花っていうのは思いを乗せる効果が爆発的に強い。だからこそ、贈り物に花はおすすめなんです。

“村”に必要とされるために

私は府中というまちを親しみを込めて、「26万人の村」だと思っています。それだけ府中はとても人の繋がりが深いまちなんですよ。繋がりの中心にあるのが大國魂神社で、神社のイベントがまだまだ残っているから市民の交流する機会がとても多いんです。だから人の繋がりが絶えないんだと思います。

府中で70年以上花屋を続けているなかで、あくまで花は一つのツールであって、どれだけこのまちにとって必要な存在でいられるかどうかというのが大事だと思ってます。「花を通じてだけど、花に限らず」という意識がものすごく強くあるんです。それは、自分のまちが発展しなければ、自分たちのビジネスも絶対に発展しない。結果的に府中を良くすることで自分たちのビジネスも良くなる。という考えからきています。この考えが地域密着の根幹だとおもっています。これからも地域密着しながら府中に関わっていきたいですね。

長く続けられる秘訣はお客さん

70年以上お店を続けられている秘訣はお客さんと共に続けられていることですね。やっぱり、商売はどれだけ自分たちが良いものを売っていると思っていたとしても、お客さんから支持を受けなかったら継続はできません。
時代とともにお客さんのニーズも変化しているので、長く愛されるためには感性や好み、流行には常に敏感であることが必要であると考えています。また、花屋において今まで正しいと思われていたことが変わってきているときにこそ、自分たちが素直に新しいものを受け入れて取り入れることも大切にしています。

ただ、流行にお店や感性を合わせながらも、花について詳しくないお客さんには経験や歴史の背景からアドバイスをすることも大事だと思っています。
例えば、お供えの花は菊というイメージがあると思います。無宗教の人も増えている今、菊じゃなきゃいけないっていう考えが時代とともにかわってきています。 元をたどると、お供えに花が選ばれ始めたのは100万年以上前なんです。はるか昔から亡くなった人にお花を手向けていたことから、私は、大事なことは「花」を手向けることだと考えています。なので、花屋として昔から菊を選んできているから、菊でお供えの花を作らなければいけない、というのは押しつけだと考えていて、お客さんから菊じゃなくてもいいんですかと聞かれたら、迷わずに菊じゃなくていいんですよ、と背景を知った上でお伝えしています。

花が大切なあの人に届くまで

オーダーをいただいたときに一番大切にしていることは、お客さんからのヒアリングです。自分のための花か、贈り物か。自身で花を選んで組み立てたいか、おまかせしたいか。おまかせのときは、原色が好きか、優しい色が好きか、アクセサリーはクール系か、それともかわいい系か。そういうところから一歩ずつ組み立てていきながら好みの糸口を見つけて提案をします。ただ、おまかせのときでも1本は花を自身で選んでもらって、贈った人が「この花は自分が選んだんだよ」と言える話のきっかけを作ってます。
花が身近な方も、そうでない方もいらっしゃると思います。どなたでも「花はよしがき」は経験と知識から満足していただける花を一緒にお作りします。そして、これからも府中に必要とされる花屋でいたいですね。

筆者コメント

お店に入るとあたたかい空気に包まれ、自分の花への思いがすんなり出てくる。そんなお店でした。お話を伺っていく中で、吉垣さんの花の知識の多さに驚愕させられました。豊富な経験、知識から提案していただける花は私たちの思いを100%、もしくはそれ以上に届けてくれると思います。
もうすぐ「花はよしがき」は改装するそうです。今の蔦で覆われた姿とはあと少しでお別れとなってしまうので、ぜひ今の「花はよしがき」へ訪れてみてください。改装後の姿も楽しみですね。

店舗情報

吉垣生花店
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜(行事営業),正月3日間
住所:〒183-0023 東京都府中市宮西町2-9-4
TEL 042-360-2724

文:中野葵(まちづくり府中インターン・武蔵野美術大学学生)
写真:山口紗和(東京外国語大学院生)
コーディネート:西武信用金庫府中支店

公開日:2024.09.18 / 最終更新日:2024.10.4

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