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【まちゼミ特集】府中に息づくお店探訪「天地米店×はらぺこりん」

※緊急事態宣言及びGOTO商店街事業一時停止延長に伴う国からの要請に従い、店舗内等で行うまちゼミについては中止となりました。
 Zoomを使ったオンラインまちゼミは予定通り実施いたします。
天地米店さんの講座は、17番『「ご飯」少しの知識でさらに美味しく!』のオンラインまちぜみが開講されます。(はらぺこりんとの共同講座は中止となりました)
【オンラインでの開講講座一覧はこちら】

このコラムは「第3回むさし府中まちゼミ」の講師となる方への取材を通して、府中に息づくお店を紹介します。取材を行ったのは、府中に関わる学生を中心とした若者達。若者の視点で府中のまちなかが見えてきます。
※この記事は2020年12月の取材に基づき作成されました。


 

府中駅南口から徒歩3分、宮町中央通りに面した所に、「天地米店」さんがあります。

店内に入ると、大事そうに並べられた種々の米袋の奥に、店主の小澤量さんと、和食キッチンカー「はらぺこりん」の米谷さんと斎藤さんも。

三人のこれまでの経験や考えてきたこと、1月に開催されるまちゼミの話などをお聞きしてきました。

左から斎藤さん、小澤さん、米谷さん

「はらぺこりん」米谷さん

私は管理栄養士で、大学卒業後病院で働いたあと、学校給食とか保育園で食育とかに関わっていました。食を通して何かをやりたい気持ちがすごくあったので会社員じゃなくて、自分で何かやれたらと思ってキッチンカーを始めました。元々米が大好きで、米と合うおかずが和食なので、和食のキッチンカーです。一番好きなお米は「金のいぶき」。本当においしいです!便秘もなくなり、肌つやもよくなるんです。

 

「はらぺこりん」斎藤さん

金のいぶきは、普通の玄米と全然違います。食べた時にびっくり、次の日トイレに行ってびっくりします(笑)腸内環境も良くなって、免疫力も上がる。実は僕、一番長くやっていたのは塾講師で。やりたいことがよく分からなくなった時期がありました。気分も沈むし、体調も悪くなっちゃったんですよ。そこでミネラルファスティングという、三日間くらいドリンクだけ飲んで、体の中の悪いものをデトックスし、その後に良いものを入れると体調が良くなるっていうのをしたんです。その良いものが「まごわやさしい」(後述)の食事でした。3年くらい前に糖質制限をして体重15kgくらい落とした時は、その食事をやめたら13kgくらい戻っちゃったことがありました。でもファスティング後に「まごわやさしい」の食事を始めたらこの半年で12kgくらい落ちました。健康的なものを食べてるなって実感できるし、お腹がすくことはないし、何よりお金がかからないから無理なく続けられる。僕はそこから「まごわやさしい」に意識が向きましたね。これをキッチンカーで売ったら面白いんじゃないかと思って僕たちは2020年の11月からキッチンカーを始めました。

 

「天地米店」店主小澤さん

大正13年に始めて僕は三代目。今や米(の商売)はなくなりつつある業種だけど、生産者さんに恵まれて、直取引の気に入った米を気に入ったやり方で売っています。今回はたまたまはらぺこりんさんが飛び込んできてくださって、今回一緒に講座をやろうとなったわけです。早速、講座のことを話したいんだけど、その前に、皆さん米30キロ担いだことある?

コツはテンポよく肩まで一気に上げていくことだそうです。記者は膝の上までしか上げられませんでした。

お米の食べ比べと、「まごわやさしい」食材を使ったおにぎり作り

 

(小澤さん)
今回やるのは、天地米店とはらぺこりんさんとの共同の講座なんですが、実は前からこういうことをやりたいと思っていたんですよ。

店の中だけでやるんじゃなくて、実際に食を提供している方と何かやりたかった。この店の中だと狭いしね。これまでは4種類のお米を出すのが精一杯で、それを小さいお皿で食べてもらうっていうのを2年やっていました。
でも今度はル・シーニュを使えることになったので、最大7台炊飯器が使える。食べられるお米の種類も増えます。

 

楽しそうに、真剣に語ってくださるはらぺこりんのお二人。食事だけでなくお二人のバランスも絶妙です。

 

(はらぺこりん)
「まごわやさしい」って何か知ってますか?
まめ、ごま、わかめ、やさい、さかな、しいたけ、いもの頭文字です。これらは、昔から日本で採れて食べられてきたもので、食べ続けるとより健康になります。そして、ご飯にとても合います。

「健康」にはいろんな切り口がありますよね。例えば、太りにくいものとか。小さい子どもがいる親御さんだったらアレルギーを気にされます。
「まごわやさしい」の食材にはそういう心配が少ないんです。卵とか肉とか、消化に負担にならないものが多いです。グルテンフリーとか、ギルティフリーとか、そういうものも「まごわやさしい」食事を取ると叶えられてしまうんですね。

 

今回のまちゼミは小学生のご家庭を対象にしているので、コロナ禍だけれど対策をした上で、おにぎりを親子で作ったらとっても楽しいのかなと思い、おにぎりを作ります。
中には「まごわやさしい」の材料で作った具も入れて。具のメニューは、簡単にできるかつおいしいものを考えています。キッチンカーで出しているような、人参を味噌で炒めたものとか。最後はみんなで試食し、家でも作っていただけるようレシピをお渡しします。おにぎりは忙しい朝でもチンしながら出かける準備できますし、続けやすいと思います。やっぱり、体にいいことでも、続かないと体は良くなりません。習慣にしやすいものは簡単にできるもの。「まごわやさしい」の食事は、簡単にできます。

それにしても、個人的にはお米の食べ比べがすごく楽しみです。普通できないじゃないですか。

 

(小澤さん)
そうですね、特別な場所じゃないと、炊飯器を同時にたくさん使うとブレーカーが落ちてしまいますから。
食べ比べで面白いのは、目隠しして食べてみると意外と皆さん好みがバラバラだったりすることです。例えば、粘るお米が好きという人がいても食べ比べして選んだのは一番あっさりしたものだったりする。そうして実は自分の好みが分かっていないことに気づくこともあります。
あとは、お米って一期一会で、二度とそのお米は食べられないんですよ。いつもの種類のお米っていうのは同じコンセプトはあります。でも作る場所、作る人で違う。細かいことを言うと、田んぼごとに違うし、田んぼの中でも実は違う。一番最初に出た穂と、最後の穂でも違います。だから、お米の味がこの前と違うっていうのは当たり前。そこを愉しめると良いですね。

 

(はらぺこりん)
そう、キッチンカーでお米を炊くと、「あれ今日柔らかい!」みたいなことがあるんですよ(笑)一瞬焦るけど、でも結局はそれも美味しいです。

 

世間ではお米が雑に扱われている?

お店に貼ってある表「お米代とご飯の原価」。こうして見てみるとお米は経済的ですね。

(小澤さん)
でも正直、お米ってどんなにご立派なお店でも雑に扱われているのが現実です。まず選び方。値段しか見られないことが多いです。
お米は、あまりクレームを受けない食材なんですよね。ネットでも「お米がまずい」ってレビューを書く人はあまりいません。メインディッシュや肉・魚料理など調理したものは、ピンポイントで批判が出るんですけど、横に付いていたご飯がまずくてもあんまり書かれない。
なので、店からすると、評価が得られないから(お米の格は)下げても良いということになってしまうんですね。

でも実は、お米はコスパが良いんです。年間を通じて価格の変動も少ないですし。例えば、ご飯一膳は20〜40円くらい。
これを他の食材に置き換えてみると、そのコスパの良さがすごくよく分かります。米だと、20円のものを30円にしたときに、値段以上の違いが出ます。他の食材だと、10円かけたからと言って劇的に変わることはまずないですよ。

 

 

お米屋さんから見た府中のまちの変化

大正13年創業の天地米店。古い府中の風景が想像されます。

(小澤さん)
日本全国だけど、昔は勝手口があって、お留守でも開いてるから入って、米櫃が空だと詰めてきちゃう。そういうサザエさん的な世界が当たり前だった。けれど今はマンションが多いから、そういうことはできないですね。ネットで注文、カード決済の配達ボックス、という形が増えている。

あとは、そんな風に家におばあちゃんがいる時代まではね、おばあちゃんは米がないときを知ってる人たちだから、多少あっても米を置いてけって言う。それが今、テレビで鮮度だなんだって言ってるのを見てる人たちは米がなくなってから買います。そうなると、パニックになった時はもう遅い。1993年の米不足のときも、うちにたくさんお客さんが並びました。
震災の時が一番ひどかったなぁ。毎晩、夜なべで精米してましたね。だから言ってるんです、「一週間分くらいは持っておきましょう」って。一週間分の米と味噌と、コンロとボンベ、そして水さえあれば人間は生きていけますから。米と味噌で必須アミノ酸は摂れる、味噌が自然塩を使っていたらミネラルも摂れますしね。

 

お米を食べることと日本の自然環境の関係

お米の生産者と消費者の間に立つ小澤さん。日々考えていることを語っていただきました。

(小澤さん)
「水と緑と土」っていうキーワードは聞いたことがありますか?富山和子さんっていう方が発表したコンセプトです。『川は生きている』『道は生きている』『森は生きている』『お米は生きている』という四部作のシリーズ、小さいときに皆さんも読んでいるかもしれません。日本の歴史における川と道と森とお米を、サイコロの面のようにどこから見るかが違うだけで、全部同じことが書いてある。日本の国土ができていく歴史の中で、実にお米と緑とが一体になっているかが分かります。

だから、お金さえあればお米が買えるから日本で米を作らなくて良いではないかと言い出すと、用水が要らなくなることになる。農業用水は、川の細かい支流みたいなもので、そういうものが一切なくなると、山に降りた水は、山に木がなく農業用水もなければ全部川に入っていって海に流れていきます。大雨の時のあの状況が常にあるようなイメージ。
逆に、なんで雨が降らなくても川が流れている?それは森が蓄えてるからです。それが、森がなくなると鉄砲水のように流れてしまいます。寡水と洪水が交互に起こるような世界ですね。それを防いでいるのが、森であり農業用水なんです。
日本では、農業用水は農家が作って管理していますから、お米は外国から買えば国内では作らなくて良いという訳にはいきません。そのように、食べることというのは実は広い視野で考えると自分のためだけではなくて、環境のため、地球のためで、その公共性が最終的に自分に返ってくるという風に考えられると良いかもしれないですね。

 

 

まちゼミ参加を考えてくださっている方にメッセージ

 (はらぺこりん)
やっぱり、体の健康があって全てが始まりますよね。今回の講座では、お金と時間をかけすぎず楽をして健康になるために、美味しいお米と「まごわやさしい」のおかずを始めてみませんかと提案できればと思っています。

でも「まごわやさしい」を推しすぎちゃうと、近寄り難くなってしまうかもしれないので、シンプルに「ご飯って美味しいんだ」と子どもたちが気づいて、食べ続けて健康に生きていって欲しいです。親御さんにとっても、子どもがご飯を好きになって、簡単なおかずでも「おいしいおいしい」と食べてくれれば良いですよね。そういう好循環が生まれると嬉しいです。

 

(小澤さん)
それに尽きますね。知識ももちろん大事なんですが、基本うまくないものは人間受けつけないですから。義務感とか、そういうのではストレスになってしまう。「美味しい」が大事です。違う品種のお米に変えた時、「これ違うね」って、子どもは気づいたけど旦那は気づかない、ということもよく聞くんですよね。そうして食卓の会話のネタにもなります。作る方も、手抜きじゃないけれど「まごわやさしい」のコンセプトをうまく使って、楽に、健康に、楽しい食卓を作ってほしい。この講座がその一助になればと思っています。

【インタビュー・文】森麻里永(東京外国語大学4年)
【写真】徳梅元気

 


【店舗情報】

天地米店

住所:府中市宮町1-34-14 デュオ府中101
TEL:042-361-2511
定休日:日曜日

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府中に息づくお店探訪 「天地米店」

府中駅南口は再開発により大型商業施設が立ち並ぶ。その一方で周辺には様々な商店街があり、そこには地域密着型のお店が数多く存在する。また、大型商業施設の中にも昔ながらのお店が移転し経営を続けているものもある。府中には地域に息づくお店たちが創り出す魅力やエネルギーが溢れている。彼らは府中を盛り上げ、魅力あるまちを創る上で欠かすことのできない存在だ。
そんな素敵なお店を訪れ、働く方々から仕事への思い、府中への思いを聞いてきた。


大正13年創業の老舗「天地米店」(新二商店会)

今回紹介するのは、京王線府中駅南口から徒歩約4分の場所にあるお米屋さん「天地米店」さん。府中駅南口から「くるる」を過ぎた角を左折し、小金井街道に面する場所にお店を構え、「米」と大きく書かれた暖簾がお客様を迎え入れてくれる。
創業は大正13年。現在の店主の祖父が開業した老舗の米店である。インタビュー当日は、「五ツ星お米マイスター」の資格を持つ三代目店主の小澤量さんから、お話を聞かせていただいた。

 

屋号の由来

小澤さんにお店の歴史について伺った。

-(小澤)

創業は大正13年になります。屋号は、昭和の初め頃まで現在の東京競馬場の前を流れていた根岸川(ねいし川)では水車を回してお米を搗いたり粉を挽いたりしていました。その水車小屋の上の山が天神山、小屋のあたりが天神下と呼ばれ、それが転じて「てんぢした→てんぢ→てんち」と呼ばれていたことから屋号がつけられました。

 

五ツ星お米マイスターが厳選したお米たち

前述のとおり、小澤さんは五ツ星お米マイスターという資格を持っている。五ツ星お米マイスターとはどのような資格なのか。また、そのマイスターが選ぶこだわりのお米について教えていただいた。

-(小澤)

五ツ星お米マイスターというのは、全国米穀小売商業組合連合会で実施している認定資格で、お米の品種の特性、栽培方法、保存と保管技術、精米・炊飯技術などのプロフェッショナルのことを言います。
当店では約30種類のお米を扱っています。各地に様々な米がありますが、私自身が味、香り、品質などを確かめながら、生産者や他店からの情報、お客様からの声を大切にして農家さんから直接仕入れています。お客様においしい米を食べてもらいたいという思いを込めて、収穫過程で混入してしまう小石や状態の良くない米を選別した上で丁寧に精米し、確かな品質で安定した米を提供することにこだわりを持って作業しています。
また店頭に並べるときはお客様が好みで選ぶことができるよう、それぞれに米の特長のほか生産者、農地、農法などをわかりやすく表示しています。

 

時代とともに変化したお米の流通事情と専門店に求められる価値

府中でお米を販売していて感じる時代の変化について伺った。

-(小澤)

府中は年々人口が増えています。人口増加に伴い米の消費量は高まっているとは思います。ただ、今やスーパーなどの量販店やネットショッピングなどでお米が買え、各家庭にお米屋さんが配達し、御用聞きができない時代となりましたので、かつての販売量と同じ、とはいかないですし、それは仕方がないことです。
一方で、専門店だからこそ確かな目で米を生産者から仕入れてお客様においしい米を提供できる価値や、その過程にかかるコストを認識していただくお客様も多く、市内以外にも多摩市・稲城市・国分寺市、東村山市、遠くは山梨県北斗市などからお越しいただいています。
これからも専門店だからこそお届けできる価値というのをお客様に提供できればと思います。

 

お客様の声がなによりの喜び

最後に、小澤さんが感じるやりがいとお米の楽しみ方について伺った。

-(小澤)

やりがいは、やはりお客様に喜んでもらえることですね。また、米に対する生の声が聞けること、おいしいものがわかる方に出会えることですね。どなたかの口伝えで「ここのお米はおいしいって聞いたから来てみた。」とお客様から聞くこともあり、嬉しい限りです。
皆さんにはいろいろな米を先入観なしで食べていただきたい。その中で自分の好みに合った米を選んでもらえたらと思います。また、米の保管方法や炊飯方法など、ここでしかわからない情報もありますので、気軽にお立ち寄りいただき聞いてください。

 


【プロフィール】
小澤 量/五ツ星お米マイスター。店頭には厳選された約30種類のお米が並ぶ。「いろいろな米を先入観なしで食べていただきたい。気軽にお立ち寄りください。」

【店舗情報】
天地米店/新二商店会
所在地:府中市宮町1-34-14 デュオ府中101
電話:042-361-2511
定休日:日曜日
営業時間:9:00~19:00